いよいよ2/15にライブが迫っているということもあり、
ぜひ「西村健司セクステット」のことについて書いてみたいと思います。
このバンドはそもそも僕が洗足音大在学中に、
「卒業研究」というプロジェクトでレコーディングを行うために集まってもらったメンバーによって構成されています。
みな洗足音大ジャズコースのOBです。
僕はTp、Sax、Tbという、ハードバップのスタイルに代表される3管編成が大好きで、
卒業研究でレコーディングをする時にはぜひその編成で、と思っていました。
そして、そのスタイルでやるならこのパートはぜひこの人に、
という思いでできたバンドがこの「西村健司セクステット」というわけです。
僕はいろんな時間を経て洗足に入ったので、
僕より年は若いのに、大学における年次でいうと全員先輩という妙にネジれた関係なのですが(笑)、
心から信頼のおける大好きなメンバーであります。
◯河原真彩(tp)
僕は洗足音大に入学してほどなく選抜学生により構成されたビッグバンド
「Get Jazz Orchestra(GJO)」に入ったのですが、
選抜というだけあってその入団にはオーディションが課されていたのです。
ある日の西村青年(当時29歳)はそのオーディションのため、
緊張の面持ちで当時バンドの監督役をされていたヴィブラフォン奏者で
作編曲家の香取良彦教授の部屋を訪ねたわけですが、
その時に同席していたのがコンサートミストレスたる河原真彩その人だったのであります。
いやいや、そのコンミスのオーラたるや凄まじいものがありました(笑)。
その部屋から逃げ出さずに最後までオーディションをやり切った自分を褒めてやりたいと思います。
冗談はさておき、当時からその演奏は素晴らしく、
トランペットらしい明るい音色の中に柔らかな力強さを感じさせるそのプレイは
本当にキラキラと輝いていました。
その頃のGJOは香取先生のオリジナルを中心としたコンテンポラリーな曲を
たくさん演奏していたのですが、
真彩さんはその複雑なコード進行の上で巧みなソロを紡いでいました。
それでいて他のトラディショナルなジャズのバンドでは、
その世界観を見事に描いた素朴なソロを存分に演じます。
芸の幅が広いのです。
このバンドでも、彼女は熱のこもったソロを聴かせてくれます。
また、アンサンブルの中でのリードも素晴らしく、間違いなく我々のバンドの華であります。
◯小笠原涼(ts)
この人は、とにかくシブい(笑)。
とてもじゃないけど20代とは思えないビターなテナーを聴かせてくれます。
僕は陰で「サックスのうまい小さなおじさん」と呼んでいます。
抜群の音楽センスと、その実直な人柄が音にそのまま出ています。
小笠原さんとは洗足ではGJOで一緒に演奏しましたし、
またいろいろな授業でも一緒になりました
。ある年にはジャズコースの定期演奏会に同じバンドで出演したのですが、
Joe Hendersonの「Jinrikisya」を演奏したときの極めて上質かつボリューミーなソロに
僕たち演奏者と聴衆はともに酔いしれました。
その時の名言『メロディが止まらない!』は、今でも忘れることができません。
余談ですが、知る人ぞ知る僕の難解なオリジナル曲「Long River Music Restaurant Waltz」を
初めて音出ししてくれたのは、彼です。
そして昨年12月にこのバンドで浅草ジャズコンテストに出場し、
グランプリをいただいたのですが、
そのときに「出よう!」と強力に僕のケツを叩いてくれたのは、実は彼です。
どこまでもジャズに真っ直ぐな小笠原涼のテナーを、ぜひ一度聴いてください。
◯永吉俊雄(pf)
この人のピアノを聴いたことがある人には、もはや言葉は要らないと思いますが、
まだ聴いたことがない、という人はまず一度、聴いてほしい。
その確かな理論と技術に裏打ちされた演奏は、聴く人にも一緒に演奏する者にも、
何とも言えない安心感を与えます。
それでいて彼独特の節回しがグイグイ聴こえてきて、
あっという間に別の世界に連れて行ってくれます。
かなり控えめな表現ではありますが「唯一無二の気のきいたピアノ」。
彼は僕が洗足に入学したときはすでに卒業生だったのですが、
とある演奏会の折に初めて聴いた、その卓越したテクニックは、
僕の心にあまりに大きな印象を残したのでした。
リハーサルでは僕の拙いアレンジに新しい風を吹き込み、その世界を広げてくれる、我がバンドの音楽監督。
言葉では到底表すことのできない、輝きに満ちた彼のピアノを、ぜひ。
◯長谷川慧人(ba)
いま東南アジアの国々を中心に精力的に活動をしているサックス奏者・岸本悠里という人がいますが、
彼女は洗足に入ったばかりの僕を彼女が主宰しているバンドに誘ってくれました。
そのときにベーシストとして在籍していたのが長谷川慧人その人であり、
後述のドラマー大江航平でありました。
彼とはGJOでも一緒でしたし、その他あちこちのバンドでご一緒しています。
長谷川“ジャッカル”慧人のベースは、とにかく優しい。
包み込むようなベース。
彼の人となりを知っている人はよく分かると思いますが、
その人当たりの柔らかさと独特な「フラ」が、そのままベースラインに出ています。
一緒に呑んだり喋ったりするとよく分かるのですが、本当に「気遣いの人」。
それでいて強烈な印象を人に与えるフシギなところも、
やはりプレイに共通しています(笑)。
◯大江航平(dr)
大江さんは自身のプロフィールでも「最高のカラーリングを追求し続けて」いると書いているのだけれど、
まさにその看板に偽りなし!本当にキラキラとしたドラムです。
パッと花が咲くように、青空に突如稲妻が走るように、
夜空に無数の流れ星が尾を引くように、彼のドラムは色彩豊かです。
前述の通り、彼とは岸本さんのバンドで一緒にやっていたのですが、
実はその前に、ひとり練習室にいた僕をセッションに誘ってくれたことがあります。
井上仁というーこの人ともやがて岸本さんのバンドで一緒になるのですがーピアニストと3人でセッションしたのですが、
その頃から大江さんのドラムはとても個性的でした。
彼と話していると、その言葉の引き出しの多さと応用力と瞬発力に
ただただ驚かされるばかりなのですが(知ってる人はこの感覚が分かると思う)、
音楽でも同じことが起きます。
「西村健司セクステット」という名前で、僕がリーダーを仰せつかっていますが、
僕はやりたい曲を持って行ったり、少しアレンジしてみたり、事務連絡を回したりするだけで、
あんまりリーダーらしいことはしてません(笑)。
メンバーそれぞれが思いや意図を持って音を出し、
譜面がみるみるうちにバンドの音楽になっていくのが、面白い。
本当に、このバンドに曲を持っていくことが楽しくて仕方がないのです。
今度のライブでも、そんな空気を感じてもらえたらと思います。
ぜひ来てください。きっと、楽しい夜になります。
まだまだ寒い日が続きます。どなたさまも、お身体を大切にお過ごしください。
Tb 西村健司